青色申告と白色申請は、ともに確定申告の種類を指します。
まず青色申告の制度は、1月の1日から12月の大晦日までの1年間で生じた所得を計算し、それらの所得税を正確に納めることを目的として作られました。この青色申告は紙に一筆書けば終了といった簡単なものではなく、書類作成の際に収入や支出などのお金の流れに関する詳細な知識を要するものです。それは、青色申告は白色申告と違い複式簿記という複雑な簿記方法によって記帳する必要があるためです。しかし青色申告をきちんと提出することによって、10万円、もしくは最大で65万円の控除を受けることが可能になります。特に独立してフリーランスや個人事業主になる際に、やっておくべき節税対策として広く知られている申告制度でもあります。
また白色申告は、世間一般では主に青色申告を行っていない人が行う申告方法であるという認識があります。白色申告を行う場合は、所得金額を割り出した後に各種所得控除などを差し引き納税額を算出します。また白色申告は青色申告と違い、専業者給与を経費として差し引くことはできませんが、「専従者控除」という枠で最大86万円の控除を受けることができます。
それでは青色申告と白色申告の内容について解説していきます。
下記は、青色申告の種類をそれぞれ控除金額別に分けた場合に必要となる書類や手続きについて簡易的にまとめたものです。
・10万円控除の場合
事前申請‥必要
簿記‥単式簿記
確定申告書類‥青色申告決算書、確定申告書B
・65万円控除の場合
事前申請‥必要
簿記‥複式簿記
確定申告書類‥青色申告決算書、確定申告書B
まず青色申告をする前に確認しておきたいのは、開業届を出しているかどうかという点です。開業届の提出がない場合、自動的に白色申告の対象になってしまいます。個人事業主の方や起業を目指されている方にとって、開業届を出していなくても特に問題がないことは既にご存知の場合も多いかと思います。しかし青色申告をして控除や助成金などの制度を利用したい場合は、承認申請書を作成する際にこの開業届の「開業日」の記入が必要となるため、必ず事前に提出しておきましょう。
そして、箇条書き項目上に記述した「事前申請」についてですが、これは青色申告承認申請書と呼ばれるもので、これを忘れてしまうと青色申告の手続きができなくなります。この申請書自体はそこまで難しいものではなく、事業内容や名前、業種などを用紙に記載すれば出来上がります。この申請書は開業届を出した日から2ヶ月以内に提出する義務があるため、注意する必要があります。忘れないように開業届と一緒に提出しておくのがおすすめです。
また65万円控除の場合に記載した「複式簿記」、これには賃借対照表と損益計算書という少し複雑な書類を作成して提出することが必須となり、簿記についての一定の知識が必要になります。
先ほどの説明に続き、次は白色申告において必要な書類や準備内容などをご紹介します。
事前申請‥なし
簿記‥単式簿記
確定申告書類‥収支内訳書、確定申告書B
上記を読んでいただいて分かるように、青色申告に比べ作業が単純であることが理解していただけるかと思います。青色申告には手間のかかる複式簿記をはじめ手間のかかる書類の準備が必要であるのに対し、白色申告では単式簿記、収支内訳書、確定申告書の作業だけで作業を完結させることができます。
青色申告のメリットは、先ほども述べたように高い節税効果が期待できる点です。
独立してすぐの頃は準備資金や固定費をはじめ、事業がうまく軌道に乗らないことや、思わぬ出費がかさんでしまうことも少なくありません。どうしても面倒で書面上の処理をしたくないといった理由や資金がふんだんにある、またその他に特別な理由がない限り、確定申告をする上で青色申告を行わないという手はありません。
続いて青色申告もう一つのメリットは、一定の条件をクリアすると青色専従者給与を経費として差し引くことができるという点です。青色専従者というのは経営者の親族を指し、特に家族経営の場合などに親族に支払う給料を経費として換算することができます。
また、さらに青色申告を行うと「小額減価償却の特例」というものが適用され、本来であれば減価償却をしなければならない備品も、この特例によって費用として計上することができるというメリットがあります。通常10万円以上の価格の備品は、使用できる期間に応じて減価償却しなければなりません。しかし青色申告を行っている場合、30万円未満の固定資産であればそれら全てを一気に経費として計上することができるのです。しかしこれには上限金額があり、300万円を超えると特例の対象外になってしまうため、事前に金額を把握しておく必要があります。
最後に青色申告のメリットとして、純損失の繰越控除という制度があげられます。これは1年間の総収入金額から経費を差し引いた金額が赤字になってしまった場合、その損失金額を翌年以降3年間繰り越すことができるという制度です。例えば1年目の確定申告で200万円の損失が生じ、翌年も100万円の赤字となったとします。しかし3年目で400万円の黒字を出すことができれば、その400万円の利益から損失額を差し引いた100万円分のみに対する税金を支払えば問題ないのです。また黒字を出した翌年に経営が赤字になってしまった場合、前年に納めていた税金を還付してもらえるため、リスクを考慮した上でも大きなメリットであると言えます。
多額の節税が期待できる青色申告ですが、デメリットも存在します。
まず一つは帳簿に手間がかかり面倒であるという点です。単式簿記で簡易的に済ませることもできますが、そうすると10万円の控除しか受けることができなくなります。この複式簿記の作成は一定量の知識量が求められ、簿記にあまり詳しくない方からすると難しい内容ではありますが、最近では青色申告の書類作成をしてくれる便利なソフトが開発されています。このようなソフトを有効活用し、是非とも65万円の控除を受けたいところです。
もう一つデメリットとして、事前に青色申告承認申請書をあらかじめ出しておかなかればならない点があげられます。しかしこれも先述したように決して難しい作業ではないため、提出を忘れないように気をつければ回避できる作業です。事前にしっかりリサーチをし、しっかり資金を確保できるように準備しておくことをおすすめします。
青色申告の際に複式簿記が必要となるのに対し、白色申告の場合はもっと簡易的な方法で申告が済む点です。白色申告と青色申告のどちらを選択するにしても、所得税法上、経費や売り上げの記帳は決して欠かすことのできない業務工程ですが、白色申告では簡単な帳簿をするだけで手続きが完了します。また青色申告のように承認申請書などを事前提出しておく必要もないため、確定申告を手軽に済ませたい方には向いている方法と言えます。
節税効果が青色申告と比べ限定的であるという点に尽きます。青色申告であれば受けることのできる特別控除、青色専従者給与を経費として計上できるという利点、純損失の繰越、減価償却などができない点において、多くの面で節税メリットが青色申告と比べ劣ります。「できれば青色申請にした方がいいよ」とよく言われる理由がこれで、事業者であれば少しでも多く控除を受けて事業の投資に回したいと思う人がほとんどでしょう。
先ほどにも述べたように、手順や手間のかかる度合いや節税効果に大きな差が出る点で、青色申告と白色申告は大きく異なると言えます。ただ一概にどの事業者にも青色申告がおすすめできるのかと言うとそうではなく、事業規模などによって白色申告が向いている場合もあります。特に事業の規模が小さく、日々の取引をまとめて計上すれば収支の把握がしっかりできるという場合は、控除などの特典を受けるために面倒な記帳をするよりも、白色申告で簡易的に済ませる方がメリットがあります。こういった場合にはわざわざ青色申告をする必要はないと言えるでしょう。どの方法が自分の事業に一番メリットがあるのかを判断し、より良い方法で申告を行ってください。
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