独立検討中の方必見!開業費の振り分けを徹底解説!

事業を開始する際に税務署に提出する開業届。そこに記載する項目の中の一つに、開業費というものがあります。開業費とは、簡単に言ってしまえば開業のために掛かった費用のこと。しかし、開業のために支払った費用の全てが開業費となるわけではありません。ここでは、どのような支出が開業費として含まれるのか、また含まれないのはどういったものか、それによって生じる帳簿付けなどでのポイント等について、詳しく解説していきます。

開業費はどこまでが含まれるの?

開業費とは、その名の通り開業のために支払ったお金のことです。例えば名刺やホームページ作成に掛かった広告宣伝費、事務所の家賃や水道光熱費、電話やインターネットなどの通信費、さらには事務用品などの購入費も、すべて開業費に含むことが可能です。

開業費に含められない経費ってあるの?

開業のために支払ったお金はほとんどが開業費と見なされますが、例外も存在します。その一つが、機械や備品等で、ひとつあたりの取得価額が10万円以上するものです。パソコンなどをイメージすると分かりやすいでしょう。これらは買って終わりではなく、長年使っていくことが前提とされているものです。そのため扱いが「固定資産」となり、開業費に含むことはできません。他にも、販売を目的として購入した商品や材料は、開業費にはなりません。これは、仕入れと見なされ、売上原価の扱いとなります。仮に開業前に仕入れをしており、開業後に販売する場合にも、開業費にはなりませんので注意しましょう。また事務所の家賃は開業費に含むことができるとお伝えしましたが、借りる時に支払った敷金は、退去後に返ってくるお金として扱われるため、開業費にすることはできません。これは、フランチャイズなどで支払う加盟金も同様で、後から返ってくるタイプのお金は、開業費に含むことができないので気をつけなければなりません。ちなみに、不動産会社などに支払う礼金に関しては、返ってこないタイプのお金ではありますが、開業費としては扱われないため注意してください。

開業費として扱えるのはいつの分まで?

開業費に含まれる支出の種類について解説してきましたが、一方でそれらが認められる期間についてはどのようになっているのでしょうか。開業費として認められる期間については、実は明確な定めがなく、極端な話ですが何十年も前の支出を開業費にすることができないわけではありません。しかし実際のところ、何年も前の支出が本当に開業のために掛かった費用とは考えられにくく、よほど明確な理由がない限り、それが認められることはありません。一般的には、開業日から数か月~半年程度前までが妥当な範囲だと考えられていますので、そこも踏まえた上で、開業費から逆算していきながら必要なものを揃えていくのが良いでしょう。もしそれ以上前に準備をしておかなければならないものがある場合は、別途それが開業に必要な支出であったことを証明できる証拠を残しておいてください。

帳簿はどこまでつけるの?

開業費の種類や期間について理解してもらったところで、今度は開業費の帳簿への付け方について解説していきましょう。本来帳簿は、支出したものを一つひとつ残しておくことが望ましいものですが、開業費に関しては開業前のばらけた時期に支払っているお金ですので、それをそのまま帳簿に記載しようとすると、内容が非常に煩雑になってしまいます。そのため、開業費は「開業費」という項目で、一括処理をすることが可能になっています。ただし一括処理する場合には、その内訳を別途エクセルなどにまとめ、添付資料として用意しておかなければならないので注意しましょう。また添付資料には、領収書や関係書類も必要となりますので、開業のために購入したものに関する書類は、捨てずにきちんと保管しておくようにしてください。

帳簿付けで押さえるべきポイント

開業費の帳簿付けで注意すべきなのが、開業日の前の期間に帳簿付けするということです。開業日とは、開業届を役所に提出した日のことを指します。そもそも開業費は単なる費用ではなく「繰延資産」と呼ばれる資産扱いとなります。繰延資産は該当の費用が発生した年度にまとめて費用計上するのではなく、5年をかけて均等償却したり、好きなタイミングで費用計上する任意償却をしたりすることができます。開業したその年に大きな利益が上げられなかった場合でも、利益が出た年に償却することで、利益の調整が可能になるのです。利益が大きくなると徴収される税金の額も大きくなりますが、開業費を計上して調整することで節税にもつながります。開業費を開業日の後の日付で帳簿付けすると、その内容は開業費として認められなくなってしまいます。節税のためにも帳簿付けのタイミングを誤らないよう注意し、開業費として認められるものに関しては、できるだけ開業費として計上するとよいでしょう。

開業費、実は2種類ある!?

開業費には「狭義の開業費(税務上の開業費)」と「広義の開業費(会計上の開業費)」の2種類が存在します。どちらも開業までにかかった費用という意味ではありますが、狭義の開業費は認められる範囲が限られています。狭義の開業費(税務上の開業費)は、会社設立後から営業開始までにかかる特有の支出のことを指します。狭義の開業費として認められる費用は、繰延資産として計上することができるため節税につながります。広義の開業費(会計上の開業費)は繰延資産として認められない費用も含めた全体の開業費のことを言います。

狭義の開業費の例

狭義の開業費の代表例として、新規名刺の作成費用があげられます。会社設立後の営業活動のために使用することが明らかであるので、定義に当てはまると認められるためです。また、開業前に作成したチラシや広告も狭義の開業費として認められます。開業のための特別な広告宣伝費にあたるためです。市場調査やマーケティングの調査費用、新規図書費、業界紙の購入費なども、会社設立のために必要な費用になるため狭義の開業費に該当します。

狭義の開業費に当たらない例

一方、会社の公式ホームページは開業後にも恒常的に使用するものになるため、狭義の開業費として認められません。電話やインターネットなどの通信費、新規接続のための工事費用、電気・ガス・水道・保険などの費用も恒常的な支出になるため、狭義の開業費には当たらないので注意しましょう。また、創立事務所の貸借料も恒常的な支出とみなされるので、狭義の開業費にはなりません。

上手な開業費の使い方とは

狭義の開業費は繰延資産として計上できるため、課税所得を減らして節税することが可能です。繰延資産は前述した通り、5年かけて均等償却するか、利益が出た年に費用計上することができるため、将来的にも利益を圧縮して課税所得を減らし、節税につなげることができます。繰延資産となるのは狭義の開業費の対象となる費用のみですので、広義の開業費との違いを理解した上で効果的に償却することをおすすめします。一般的に、開業前に購入しても恒常的に使用すると判断されるものは、広義の開業費に分類されます。また、繰延資産は他にも創立費や開発費、株式発行費、社債発行費、新株予約権発行費なども含まれるため、黒字化した後も節税効果を発揮させるためにうまく活用しましょう。

開業費を正しく理解しよう

独立開業を目指す方は、開業費をかけて事業の準備を進めるはずです。開業費の中でも狭義の開業費に関しては、節税につながるというメリットがあるため、内容を正しく理解して効果的に計上するようにしましょう。

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