環境問題への意識の高まりや商品に対する低価格志向により、近年はリサイクル市場が活性化しています。この流れに乗り、リサイクル業界への就職や起業を考えている人も多いかと思います。しかし、リサイクル業界の特徴がわからなければ、就職や起業は決断は難しいです。そこで今回の、リサイクル業界の動向や将来性、具体的なリサイクル業の種類などをポイントに分けて解説していきます。
リサイクル業界は、不用品の買取や再販売によって利益を得るビジネスです。しかし、リサイクル事業は厳密に言えば不用品を材料として新しい製品を作る事業です。不用品を安値でそのまま販売するのは「リユース事業」という名称になります。つまり一般的なリサイクルショップは、名前こそ「リサイクル」であるものの、実際にはリユース事業を行っていることになります。ただ、一般的なイメージではリサイクル業界もリユース事業もほぼ同じ事業内容のイメージを持たれており、まとめてリサイクル業界と呼ばれることも少なくないです。
リサイクル業界はできたばかりの業界ではありますが、近年の世界的な環境問題への意識の高まりやSDGsの影響などもあり、市場規模を年々拡大させている業界です。
就職・起業するにあたり、安定した収入を得るためにも業界の将来性は必ず必要になります。初めに、リサイクル業界の現状と将来性についてチェックしていきましょう。
環境省が発表した「平成30年度リユース市場規模調査報告書」によると、2016年における中古品のみの年間商品販売額は4兆1275億円という結果でした。そのうち82.7%を占めるのが中古自動車小売業であり、次いで骨とう品を除く中古品小売業が10.9%、古本小売業が3.1%、中古電気製品小売業が1.8%と続いています。中古自動車小売業では、2012年の2兆3445億円から2016年の3兆4142億円へと右肩上がりになっています。古本小売業に関しても2012年の581億円から2016年の1274億円へと増加しています。中古品小売業は、2012年の2435億円から2014年の2428億円と若干縮小したものの、2016年には4490億円と飛躍的に拡大しています。
取り扱う品物によって多少ばらつきはありますが、総じて年々市場規模が増加していることがわかります。なお、この市場規模にはカウントされていないものの、太陽光などの再生可能エネルギーや鉄くずやレアメタルなどの素材リサイクル事業もリサイクル事業に含まれます。特に素材リサイクルに関して、国内はおろか海外でも貴重な資源として注目されています。経済産業省が公表した資料によると、2050年には約150兆円にまで市場が拡大すると見込まれており、リサイクル事業の将来性は非常に高いと考えられます。
一般的な業界は、不況になると買い控えなどが起きるため売上が落ちるケースがほとんどです。2008年頃に起きたリーマンショックでは、多くの業界がダメージを受けました。しかし、リサイクル業界でも多少の落ち込みはあったものの、大手の倒産など深刻なダメージを受けた企業は多くはありませんでした。これは、不況時に経済的な負担を感じた消費者が手持ちの品物を売ったり、中古品でも安くて問題なく使える品物を求めたりしたためだと考えられます。つまり、リサイクル業界は不況時にこそより力を発揮する業界だと言えるでしょう。景気にあまり左右されずニーズが安定しているリサイクル業界は、将来性においても大きな問題はないと考えられます。
取り扱いする物により違いはありますが、リサイクル業界の市場規模は年々拡大しています。では、なぜこんなにも好調なのでしょうか。市場規模が拡大を続ける要因について、2つのポイントをご紹介いたします。
不用品をほかの人に再販売するというリサイクル事業は、業者しか行えないわけではありません。フリマアプリやネットオークションの普及により、一般の人々も手軽に他人と取引を行えるようになりました。2019年に経済産業省が公表した電子商取引に関する市場調査の結果によると、フリマアプリの市場規模は2016年に3052億円だったものが2018年には6392億円と驚くべきペースで拡大しています。フリマアプリが初めて市場に登場したのは2012年頃です。その後6年ほどで個人間取引が急増し、これほどの巨大マーケットが形成されました。
これは、エコ意識や低価格志向の高まりなどにより、中古品の売買・使用に抵抗を感じない人が増えたことが影響していると考えられます。フリマアプリやネットオークションに関しても車から電化製品、衣類等さまざまな品物が取引されており、リサイクル業界全体の市場拡大に大きく影響したといえます。
現代では、プラスチックごみの増加による海洋汚染、温暖化による砂漠化や気候変動など、地球環境に関する問題が深刻化しています。これにより環境問題に関心を持つ人が増え、「物を簡単に捨てるのはもったいない」「使えるものは使う」などの意識も強まるようになりました。また、エコやSDGsと呼ばれる「持続可能な開発目標」への意識が世界的に高まっており、日本でも政府主導でさまざまな環境問題への取り組みが行われるようになりました。こうした世界の流れから、リサイクル業界は政府の方針にもマッチしており、公共性が高い業界といえます。このことから環境問題への取り組みは今後も継続・拡大していくと予想されるため、リサイクル業界の市場は安定していると言えるでしょう。
リサイクル業界へ参入するにあたり、どのような仕事があるのか知っておくことは欠かせません。次は、具体的なリサイクル業の種類を2パターン紹介します。
リサイクルショップは、ネットショップや店舗を運営して中古品の買取や再販売を行う仕事です。こちらはビジネス目的で不用品を取り扱うため、「古物商許可」が必要になります。古物商許可さえあれば誰でも始めることができます。またネットショップであれば十分な資金がなくても独立開業しやすいというメリットもあります。もし店舗を構える場合はコストが多くかかるため、エリア調査や広告なども含めてしっかりとした計画を立てましょう。安定して利益を出す必要があるので、よく考えてからの開業をお勧めします。いずれの形態でも、フリマアプリやネットオークションが拡大している現代では、安定した利益を出すために仕入れ・販売ルートを確立する等、様々な工夫が売り上げの維持には必要です。
不用品回収は、その名の通り不用となった品物を回収し、売ったり交換したりして利益を得る業種です。故障した家電でも、種類によっては海外にも売れることがあるので利益が期待できます。こちらもリサイクル業と同じく、営業するには各都道府県から「古物商許可」を得なければなりません。不用品などをビジネス目的で売買・交換する事業者には必ず古物商許可が必要になり、無許可で事業を行うと処罰の対象となるので必ず取得しましょう。
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